運動会を大切な経験にと願い、先陣を切る今井副校長
新型感染症の猛威が続く2021年前半も折り返しに近づいている。
日本の多くの学校、とりわけ公教育では、学校行事も縮小、最低限の人員で実施がされている。
ここLCA国際小学校では、昨年5月よりICTを活用したオンライン授業とのハイブリッド学習を展開してきたこともあって、2年目の今年は、感染対策を万全にしながらも、教育活動の充実に向けて新たな挑戦が始まっている。
子どもたちも、保護者の皆様も、私たち教員も、つかみどころのない不安感を拭えずにいます。
そう語るのは同校副校長の今井洋介先生だ。
この記事では、同校の変化に密着し見えてきた、学校が持つべき新時代の適応力について考えを巡らせたい。
ハイブリッド授業で培った学校を躍進させる3つの素地
こちらの記事でも紹介してきた通り、LCA国際小学校では昨年5月より、動画配信授業、Live授業と合わせ、オンライン空間での教材活用を進めてきた。
児童たちは現在、ひとり一台のiPadを駆使し、教室で安全に学んでいる。
昨年度の挑戦によって、本校の先生方には悲観的な出来事をポジティブに捉える考え方が根付きました。 あの時、できることだけやっていこうと守りに入っていては絶対に実現していないことが今実現しています。 振り返ってみれば、先生方それぞれに基本的なICT活用スキルが身につきました。 また、チームで技術を共有したり、全教員に向けた研修会を企画するなど、先生方個人個人のトライアンドエラーを「共有」して流用する文化も醸成できました。 今井副校長
これらの素地が、今相乗効果を生もうとしているのだ。
学校行事の新しいあり方
どこの学校も、梅雨に入る前か秋口に、運動会や体育大会があることだろう。LCA国際小学校でも、5月下旬に運動会が行われた。
学校関係者の皆様ならお分かりだろうが、運動会の数週前には、運動会を盛り上げるための創意工夫が始まる。
運動会前の全校朝礼では、写真のようにオンライン配信で各教室の同じチームの仲間に向け、リーダーが檄を飛ばした。
スポーツ大会を盛り上げるため、メッセージを送るリーダーたち
2年前までは、体育館や運動場に一堂に介して行われていた集会も今ではオンラインで配信が可能だ。
必要な設備はこのようなイメージである。
即席の配信スタジオの様子
一昔前までは、高額な機材を揃えなければならなかったが、今となれば、校内Wi-fiが完備されていて、業務用のPC、カメラ、モニターがあれば、10万円以下でこのセットを組み上げ可能なのだ。
プレゼンテーションやカメラ映像のスイッチングも行いやすい。
同様の設備があれば、運動会当日もYouTube Live配信が可能である。
LCA国際小学校の今年の運動会は、学年別で行い、密になる状況を極限まで回避し、保護者の方の参観も最小限に抑え、希望者の方々にはオンラインライブ配信で参観可能な形をとった。
3密を避ける会場設計
会場脇のLive配信設備
Youtubeのウェブカメラ配信であれば、どのユーザーでもLive配信をすることができる。
事前に保護者に向けて、配信リンクを知らせておき、当日は自宅から観覧する人も多かったという。
玉入れに白熱した児童たちの様子
3密回避が生む苦悩
如何にICT化が良い素地を生んだとしても、依然として悩ましい事象が存在する。
消毒にかかる時間とヒューマンリソースは欠かすことができません。運動会のプログラムも、学年別に実行した分手間は数倍です。 また、応援合戦など、飛沫対策の影響で無くしたプログラムもあります。これらの制限は必然的に運動会を「盛り上がりにくいイベント」へと変えてしまうことが予想できました。 そのため、少しでも学校の児童みんなで取り組むイベントなんだと啓蒙することが大切でした。 Google meetなど、オンラインソリューションは、子どもたちに運動会の主人公となってもらう上で、欠かせないものとなりました。 ただ・・・、やっぱり反応がすぐ「見えない」のはICTの弱いところですね! 私たち教員は空間を把握して、声かけの濃度を変えますが、反応がないと、今のアプローチがうまくワークしているのか、そうでないのかが分かりづらいです・・・。 その辺りの反応を見やすく設計することが、今後この感染症対策とより良い場づくりの良い塩梅をとることになるでしょう。 今井副校長
今井副校長のおっしゃる通り、ICTが全ての問題を解決はしない。
ただ、挑戦を続けて、先生方みんなで使ってみて、だから実現する活動があった。
ポジティブに、ハングリーにできることを続けることが、この変化を強要される時代で、良い学びの場を創っていく要素なのだと筆者は考える。
挑戦の先のビジョン
今回の運動会は、去年とはまた一段濃い内容で行うことができ、保護者の方々からの感想も、非常に良いものだったと考えています。 普段観にこられない、おじいさまやおばあさまにも観ていただけたのはオンラインならではでした。 学校としても、ここまで積み重ねてきた知見を今度は、「一人で学ぶこと、みんなで学ぶこと」の軸と「家で学ぶこと、学校で学ぶこと」の軸に分けて、最適化していくと、今よりもっとLCAでの学びにご満足していただけると考えています。 今井副校長
国際人を育てる。
考え、感じる力を養う。
個性を活かす。
日本中の学校に端末が入ったシーンにおいて、これら3つの理念の下、一歩先の活用を実践しているLCA国際小学校。
新型感染症の脅威が、数年後振り返った時に、児童たちにとって大きなインパクトを与える変化のきっかけとなることだろう。
悲観的な状況をポジティブに乗り越える考え方、ICTスキル、ノウハウを共有する文化。
そして、学校として、学びをどのように設計し、どのようにできることに集中していくのかを決めること。
この辺りの要素が、新型感染症の脅威に「適応」し進んでいく学校の資質となるのであろうか。
LCA国際小学校の今後の取り組みにも目が離せない。
今回取材を終始笑顔でお受けいただいた今井洋介副校長
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