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<strong>児童一人ひとりを主役にする授業改革 〜LCA流 ICT活用で児童の主体性を引き出す授業づくり〜</strong>

「意見の共有は、タブレットを使おうよ」

の声が私の度肝を抜いた。

こんな発言が自然と出てくる時代がGIGAスクール構想元年なのだ。

この児童は、学びの振り返りをシェアするこの時間を、もっと効率的に共有ができるだろうと思いついたのである。

この授業を担当する先生は、LCA国際小学校の中山先生で、2020年にICT活用をスタートさせた先生の一人。

まだ活用を始めて3ヶ月ほどしか経っていないが、ICTを活用した授業進行は安心感を生んでいる。

本記事では、ICT活用にチャレンジを続ける中山先生の胸中を、Q&A形式で綴る中で、いかにして中山先生が、児童の主体性を育んでいるかをお伝えする。


ICTを自然に使いこなす児童たち

より教育効果が高い授業をしたかった

 Q:今回、ICTを活用しようと思ったきっかけはなんでしたか?

 A:国語の単元で「意見文を作る」という内容があるのですが、資料を探してきて、それを分析して書くんですね。  今までは、資料を探すことはインターネットで簡単にできますが、それを印刷して、分析して、切りはりして紙に意見文を書く、というのがとても手間でした。  そもそも、子どもたちの今後の人生で、「手書きでなければならない」という場面はそれほど多くないでしょうし、レポートを手書きで書くこともほぼありません。  自分の手で書くことも大切ですが、小学生のうちから調査・分析・意見文作成まで、タブレット一台で作成できたら良いと考えておりました。

国語科では、手書きにこだわりたい、という想いを持つ先生も多い。

だが、上の写真が示すように手書きに費やしていた時間をタブレットでの作成に切り替えると、より短い時間で意見文が作成できる。

その空いた時間を、成果物の共有や意見交換に使えるようになるのだ。

中山先生はそうやってICT活用へ一歩を踏み出した。

サポート体制が必須!

活用を始めるに当たっては、学校の体制や他の教員の存在が心強かったという。

 Q:ICTを活用するのに心配だった点はありましたか?

 A:一番心配だったのが、「そもそも自分自身が使えるのか」という点でした。  どんなアプリがあるかもわからないし、知ろうとする時間的な余裕もない。だから使いこなす自信が持てませんでした。  これは私だけではなく、多くの先生方がICTを目の前にして抱いている心配事だろうと思います。  幸いなことに、本校にはICT支援員がいて積極的にサポートしてくれるので、そこは非常に安心して一歩を踏み出すことができました。  また、私は本校の中でICT活用を始めたのが遅い方で、先に活用を始めている先生が他にいました。  彼らが先に実践しているからこそ、自分もそろそろ、とは思っていましたし、横の連携がうまくいきました。とても心強かったですね。

MetaMoJi ClassRoomを活用し、分類ワークを行う中山先生

予想外の効果に大きな手応え

タブレットでのレポート作成体験によって、スムーズな授業進行を実現した。

だが、それ以上に「予想外の効果」が中山先生に大きな手応えを感じさせた。

 Q:活用を始めてよかった点や、ワクワクした点はありましたか?

 A:キーワードは「可視化」だと思います。  一つは児童の進み具合が手元でスムーズに見られるツールがあること。これによって手が止まっている児童や困っていそうな児童を見つけやすくなり、その児童のところに行って個別に指導することが、より多い人数に可能になりました。  物理的にも精神的にも、子どもたちとグッと距離を縮められました。  さらに、普段なかなか手を挙げたり発表したりできない子のプロセスも見ることができることは、一人ひとりの学習効果を高めることにつながるのだと思います。  ひょっとしたら、児童たちには「手書きで書くことへの抵抗感」があったのかもしれません。タブレットを使うと、しっかり書けるんです。  そしてその書いたことを名前を出さずに画面に映すことで、その場でみんなに見てもらってフィードバックをもらうことができます。  これは児童たちにとって、とても価値が高いことだと思います。

児童の進捗の可視化と共有で一人ひとりを主役にしていく

中山先生の授業を見学していると、とにかく児童一人ひとりへの声かけが多いことに気づく。児童の名前を呼びながら「大丈夫?」「どうすればいい?」「これは素晴らしいね」という声かけを行う。

ICTを使うことで進捗や成果物を手元で一瞥でき、声かけの量や質にこだわることができる。

授業後のコメントも欠かさない。

するとどうだろう。先生からの声かけやコメントに応じて、児童はどんどん作業を進めることができ、修正したり並べ替えたりしやすそうだ。

そのことも相まってか、質問や教え合いが活性化する。

得意な児童も苦手な児童も、「先生が自分を見てくれている」という感覚が芽生え、学びに前向きになれるのだ。

この声かけが主体性を引き出す「スイッチ」になっていると言えよう。

協働作業や「話す・聞く」にも活用したい

数ヶ月のICT活用経験で一気にICT活用の”トップランナー”として授業改革に取り組んでいる中山先生。

 Q:今後はどのような活用を進めていきたいですか?

 A:今年は私自身に「慣れ」が必要でしたし、使い方や機能も知らなかったので、やってみて失敗して改善して、という繰り返しでした。児童の反応からヒントを得ることも多々ありました。  そのおかげで児童だけでなく私もかなり使い方が見えてきました。今やっていることは個人作業なので、次は協働作業に取り組みたいと思います。  コロナ禍の制限により話し合い活動やグループ活動はできませんが、ICTによって物理的距離を確保しながら、他者と一緒に一つの成果物を作り上げる場づくりに取り組んでいきたいと思います。  また、可能ならディスカッションのような「話す」「聞く」シーンにもICTを活用したいと思います。良いアプリやツールを探したいし、国語科の中でも議論しながら取り組んでいきたいと思います。  困難な状況が、さらに良い指導を生むチャンスになると思っています。

LCA国際小学校には、「個性を生かす」という教育理念がある。児童一人ひとりの個性をさらに伸ばしたい。そんな想いが、ICT活用によってより高いレベルで実現するようになったといえる。

しかしそれはアナログな「声かけ」を何より大事にしている先生方の愛情がポイントだった。

ICTを活用することで、情報の交換性を向上させることはもちろん、コミュニケーションの量・質を向上させる。その中で、見てもらい、褒めてもらえ、改善してゆく喜びを児童たちに届けることで、さらに学びに前向きになる

これこそGIGAスクール構想の狙いの一つではないかと考える。

今後もLCA国際小学校の様子をお届けする。

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